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活動報告『ビジネスとの連携の視点から見た電子政府のあり方』について

〜電子政府成功のポイントは行政業務の民間への大胆なアウトソーシング〜
 
2005/4/19
次世代電子商取引推進協議会

 次世代電子商取引推進協議会(略称:ECOM)は、平成16年度電子政府関連活動報告『ビジネスとの連携の視点から見た電子政府のあり方』を公表します。

 この活動報告書は、平成16年度電子商取引推進協議会「電子政府・ビジネス連携ワーキンググループ」が取り纏めたもので、ビジネスを遂行する上において“使える”電子政府・電子自治体を、各種事例から検証したものです。ビジネスにおける電子政府の関わりと、申請手続きを行う上での課題・問題点などを、ヒアリングを通じ実態調査し、電子政府活用に向けたあるべき姿を提言しています。

 政府各省庁、地方公共団体の産業振興担当部門、および各地域の商工会議所、商工会等の企業団体などにおいて、企業や個人事業者に対するビジネス支援の参考になると考えています。

 報告書の主なポイントは以下のとおりです。

■報告書の主なポイント(概要)

第T章 ビジネスと電子政府のかかわり

  • 業種を問わず、複雑で量も多い政府・自治体とのやり取りに対する効率化のニーズは潜在的にかなり高い。特に、商業・サービス系における新規ビジネス開拓をはじめ、事業の新陳代謝を活性化させるためには、申請・届出などの行政サービスの効率化は不可欠である。
  • 電子政府のビジネスに対する期待効果をマクロ的に捉えると 1)新しい技術の普及 2)技術の変遷に即した社会制度の改革 3)企業人や国民全体のリテラシー向上があげられる。ミクロ的には、企業活動における規制緩和や制度準拠への負担の軽減といった効果が考えられる。こうした期待効果を実現するには、単なる窓口の電子化ではなく、行政のBPRが不可欠である。

第U章 事例から見る行政手続きの現状

1.国税、地方税の電子申告・納税

  • 国税電子申告・納税システム(e-Tax)は平成16年6月に全国的に運用が開始されたが、普及率が従来の紙ベースに比べ0.01%程度である。国税庁では平成18年度の利用件数を130万件と見込んでいるが、今後e-Taxの利用を飛躍的に向上させるためには、納税者にとっての利便性向上や、利用メリットの付与といった利用環境の整備が不可欠である。
  • 米国では、従来郵送で行われていた申告を電子化したことで、還付金の早期回収が可能になったことや、納税におけるクレジット決済の併用などのメリットを納税者に与えている。また、電話による申告・納税や、無料で申告書を作成するボランティア組織など、納税者に対するサポート体制を提供している。
  • 韓国では、国税の電子申告を利用する納税者や税務代理人(税理士、会計法人等)に対する税務控除といった金銭的なインセンティブが与えられている。また、各銀行が発行している電子認証書を国の認証として認め、すでに876万人を超える個人が公的証明書を取得していることも電子申告の普及に貢献している。納税面でも、クレジット納付が活用されている。
  • シンガポールでは、電子申告を行った日に応じて当選確率を変えたくじを発行するなど、電子申告への移行を促すだけでなく、システムの負荷分散まで見越した仕組みを導入している。
  • 我が国の電子申告・納税の現状をヒアリングした結果、1)電子申告の認知不足 2)住基カードの認知不足 3)e-Taxソフト仕様改定の問題 4)社会システムとしての制度設計不足、といった指摘がなされた。今後の電子申告・納税システムを普及する上で、納税者にとって明確なインセンティブの付与や、手続きの簡略化をはじめとする制度設計の見直しが大きな課題である。

2.フランチャイズ・チェーン業界における店舗新設に伴う行政手続き

  • 店舗新設における行政手続きは、特に建築許可申請を取り付ける過程で、多くの行政機関窓口に個別に手続きを行う必要があることから、多大な時間と労力を要している。この原因として、1)行政ごとに業務プロセスが異なっていること 2)判定基準や届出項目、内容が行政間で統一されていない 3)用語の不統一が見られる、といった事情から、行政窓口別に個別の申請が必要となり、企業の標準化やシステム化が進まない事情が指摘される。
  • 申請時には事前協議が慣例化しており、申請書を提示した上で、担当官との対面による協議を経て裁可後受理されるといったプロセスが一般的であることから、申請・届出の電子化は困難である。また、例えば建築認可申請などは、開発許可が下りて検査に合格しないと受理されないという仕組みになっているため、複数の行政窓口に行う手続きのワンストップ化も困難な状況である。
  • フランチャイズ・チェーン業界ならびに建築事務所へのヒアリング調査を行った結果、企業側のプロセスは標準化されシステム化されているが、申請項目が所轄の行政機関によって異なることから、改めて申請用紙に転記するといった余計な作業が必要になっていることが判明した。この背景には、行政側が紙による申請しか認めていないことがあげられる。
  • 店舗新設における行政手続きは、基本的に対面による指導を前提としていることから、電話やFAXも認められておらず、事前にアポイントをとって役所に出向く必要がある。当然時間外の対応は不可である。こうしたことが申請上の負荷となっており、一方で、役所の担当官の裁量範囲が非常に広く、担当官によっては指導内容が逆になるということも多々あるとの指摘があった。

3.海外企業の日本進出に伴う行政手続き

  • 対日投資の促進はわが国の経済政策としてきわめて重要な施策である。
    とりわけ地域経済においては、産業クラスター再生に向けた取り組みの目玉として認識されており、海外企業の誘致を積極的に働きかける自治体も多い。
  • 一方、対日投資の阻害要因として1)参入障壁 2)過大な公的企業 3)対日投資に対する誤解 4)促進策が不十分、といったことがあげられる。対内直接投資残高を国際的に比較しても、主要先進国ではGDPに占める割合が20%を超えているのに対にて、日本は1.2%と非常に低い。
  • 海外企業が日本に進出する際の行政手続きは、大きく法人登記関連手続きと在留資格取得手続きが必要である。なかでも、在留資格取得については、手続きが煩雑であるばかりでなく、審査期間が長く、審査基準も明確でないといった課題が存在する。

第V章 使える電子政府に向けた提言

  • 電子政府活用に向けた課題を整理すると以下のように考えられる
    1)利用者本位の視点 : 現在の電子行政手続きは、現行業務の一部を電子化しただけ
      であり、利用者の業務プロセス改善につながっていない
    2)行政BPRの実施 : 現在の電子行政手続きは、現行業務プロセスに電子行政手続き
      受付業務が増えた構成で、全くBPRに寄与できていない
    3)高コスト体質の改善 : 業務プロセスの効率化が図られていないことから、高コスト構
      造は行政・企業双方とも改善されていない
    4)インセンティブの付与 : 利用者業務にとって明確なコスト削減につながるインセンティ
      ブが求められる
    5)行政職員のナレッジ・ワーカー化 : 電子化の期待効果として行政職員の負荷軽減に
      よるナレッジ・ワーカー化が求められるが、現状では電子行政手続き受付作業の増大
      を招くだけである
  • 上記課題を解決するために、以下の提言を行う。
    利用者と行政機関の間に、サービス分野ごとに専門の民間コーディネート機関を創設して、利用者・行政・民間コーディネート機関3者間で電子行政手続き業務にかかわるBPRを実施し、もって使える電子政府を実現する。
  • 民間コーディネート機関は行政機関から認定された民間機関であり、行政手続き業務の一部をアウトソーシングする。例えば、事前相談、受付、受理、審査、通知といった申請業務を民間コーディネート機関にアウトソーシングすることで、利用者の行政手続きに伴う負荷は大幅に軽減されると考える。
  • 民間コーディネート機関を含めた新たなスキームによるメリットは以下のとおりと考えられる。
    1)行政機関のメリット :
    • (行政機関・利用者・民間コーディネート機関)3者横断BPRによる業務コストの低減
    • 民間コーディネート機関とナレッジ共有ができ、新たな行政サービス企画に活用できる
    • 構築する電子政府システムの費用対効果を向上させることができる

    2)利用者におけるメリット :

    • 3者横断BPRによる業務コストの低減
    • 電子行政手続き支援システムと企業内業務システムとの連動が可能となり、業務プロセスのスピードアップが実現できる

    3)民間コーディネート機関のメリット :

    • 行政手続き業務を新たなビジネスチャンスと捉えることができる
    • 対象行政手続きを増大させることによって業務の拡大が図れる
    • 民間事業者として、新しい利用者サービスを創出することができる

 以上、行政手続きの利便性向上に向けた考察を事例調査を中心に行ったが、それらの抱える行政手続き上の課題を解決する方法として、民間コーディネート機関を介する新たな行政手続きスキームの構築が望まれるとの結論に達した。その背景には、行政業務の大胆な民間への移管と、申請手続き処理プロセスのBPRが必須となる。
 こうした結論の背景には、これまでの電子申請システムの構築が、現状プロセスをそのまま踏襲してきたことに対し、利活用向上の上で限界が来ているとの見方が前提にある。
元来、電子政府は国民生活の生産性向上のために計画され、構築されたものである。この原点を見直し、わが国の経済・社会的基盤の強化に結びついてこそ、電子政府が社会に根付いたことになると考える。


■本件に関するお問合せは下記までお願い致します。

次世代電子商取引推進協議会(ECOM) 電子政府・ビジネス連携WG
主席研究員:安達 和夫
〒105-0011 東京都港区芝公園3丁目5−8 機械振興会館3階
TEL:03-3436-7558 問い合わせメール

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